| 撮影日 | 2023.1.1 |
| 撮影場所 | 山形県山形市 |
| 登場人物 | 〇〇〇〇, 〇〇〇〇 |
| 収録時間 | 15分 |
入社して数週間、会社の実習室で塗装のイロハを学ぶ。
道具の名前、材料の名前、基本的な作業の手順など。
何もわからない状態で現場に投げ出されても、混乱してしまうかだという。
しかし、それも最近の事らしく、親方である高木さんが入社した20年前は、どうだったかは定かではない。
「親方」というのは、文字通り職場での親のような存在であるのかも知れない。
学校を卒業し、社会人経験、建築現場経験もない新入社員に、一から教える。
親方の高木さんのみならず、建装テクノでは、まずやって見て失敗して覚えることを推奨している。
感じる事、考える事、そうやって塗装業という仕事を少しずつ、確実に体に浸み込ませていくように。
約5か月前(撮影時)に入社した川口さんの入社のきっかけは、高校時代、「自動車工学専攻課」の実習で車の本格的な塗装を経験だった。
その時、友人との作業を通し、塗装に魅力を感じたという。
一方、塗装歴21年の高木さんは、家が近かったから……と答えるが「後世に残る仕事」と自分に言い聞かせて入社したと、当時から自分の仕事の意味を模索していたようである。
約21年前、高木さんの師匠役を努めた八木さんは、「高木は、入社式の時、一人だけ私服だった。
骨がありそうだったから、引き受けた。」と語っている。
親方として新人を教える立場に成長し、また、会社に工務部の係長として意見し、引っ張っていることを、嬉しく噛みしめている様であった。
「見た目重視と機能重視」。塗装には状況によって、2つの大きな役割がある。
ただ、塗るのではなく、状況に合わせ何が最適な方法かを、自分で考えること。
だから、自分が塗ったものと、見て比べて、感じて欲しい。川口さんの成長に合わせ、高木さんは、仕事の中で意識すべきことを、真っ直ぐに伝えていた。
川口さんもそれに応える。
淡々と、言われたことに応えていく。作業を進めながら、塗りながら、削りながら、頭の中で何を指摘されたのかを考えているのかも知れない。
特大サイズの自動車用のスポンジにドンドン、水が吸収されていく。
そんな感じを覚えた。
川口さんへのインタビューは、入社後2~3か月の時にお願いしている。
現在の仕事について聞いた。主に下地処理を中心に作業をしています(下地処理は、塗料を塗る前の作業)。
「パテ処理」は、壁面の石膏ボードを骨組みに固定するビスの跡を、パテで埋める作業である。自分が与えらている、仕事に関して誇らしく語っていたのが印象的だった。
親方の高木さん。
親方としての役割は?という質問に対して、「親方と言っても、色んな親方の考えがあるので一概には言えませんが……。」と、作業をしながら、様々な事に目配り、気配りしていた。
3人での、作業の進め方、スピード、仕上がり、危険な作業はないか?もちろん、新人の川口さんの動きに関しても。
密封した場所での自動車等の塗装とは違い、建築塗装は外気にさらされる。ブロアーで、ゴミを飛ばしながらの作業が続く。
現場のもう一人の存在は、「一人親方」として独立し、建装テクノ協力業者として現場をサポートとしている、塗装歴40年の職人、吉田さん。
高木さんとは、20年の付き合いで、仕上がり、スピード、コスト感、バランス感覚の取れた感の合う仲間だと高木さんは言う。
様々な先輩の意見を聞いて、まずはやってみる。そして、何が自分に合うのか?正解は一つじゃない。全ての先輩から学ぶ姿勢を、高木さんは、大切にしている。
「結局、塗装業ってパーフェクトってないんですよ。」インタビューで話してくれた、親方の高木さん。
自動車などの工業製品の塗装と違い、建築塗装は外気にさらされる。
また、内装の塗装においても、店舗で改修であれば、慌ただしい現場の中での塗装になる。塗料の用途と、スピード(工期)、そして仕上がり(品質)を考え、チーム、そして個人でのベストを尽くす。
それでも、細かい部分を指摘されれば、やり直すことになる。
建築仕上げ業の宿命とも言えるのではないだろうか。「今あるベストで、精一杯やれたんだろうか?」と、自問自答を繰り返す。
「何度も、何日も頭の中でシュミレーションし、機能面、仕上がり精度、スピード、それが“キパッと”終わった時、清々しい気持ちになるという。
川口さんは、親方に褒められると嬉しいと。
「言われたことをやるだけだったら、機械かな」
高木さんは、川口さんの指導で、自分で考えることを薦めていた。
塗る相手(塗るもの)の状況は様々だ。
天候、腐食の状況、見た目重視か、機能(耐久性)重視か、それらを見て、感じて、何が適性? 塗り方まで、考えて経験して欲しいという。
だから、感じる事を大切にしている。
外を歩いても、景色を見ても、街を歩いても、それがどんな色なのか、質感なのか。
その様にして、塗装の感性は磨かれていくのだと思う。それが、機械にはできない仕事の所以だろう。
本社工務部のメンバーは、朝7時頃に会社に出社し、其々の現場に移動する。
入社して数年は、同じ親方に教わり、そして職長を経験していく。
親方や、その周りの社員、先にあげた吉田さんの様な協力会社の職人が、支える。
建装テクノには、そんな協力会の職人が50社以上いる。
この日、1日の現場の作業が終わり、帰社し後片付けと明日の作業の準備を行っていた。
川口さんは、親方の分の道具(ハケ)も、シンナーを使い洗っていた。
背中には、汗がにじむ。
インタビュー。川口さんが、総会で自信が言った言葉を思い返す。
建装テクノでは、年に1回、5月に協力会社を集め、説明会、そして親睦会を行う。
その席で、抱負として「10年以内に、親方を抜きたい。」と抱負を語った。
その堂々とした態度に周囲の職人や、社員は驚いた程だ。
「いいと思いますよ、ただどういった部分で超えたいのか?直接聞いてみます。」「親方を超えたい。」まだまだ、始まったばかりの川口さんだが、その言葉と、日々喰らいついてくるような仕事ぶりが、更に親方を大きくすることだろう。教えることは、教わることでもある。
教え方に関して、高木さんに聞くと「感情を隠そうとは思ってません。
伝えたいからです。ただ、それだけです。」その、真っ直ぐな言葉に、大切なことを学ばせて頂いたように思う。